プロBMXライダー池田貴広が教える、BMXの楽しみ方/動画「初心者のためのBMX」

ダイナミックなパフォーマンスで観客を圧倒する「BMXフリースタイル パーク」や、特殊なクレイコースで速さを競う「BMXレース」が2020年の東京オリンピックで正式種目に決定し、多くのメディアでBMXを目にする機会が増えました。このほかにもBMXにはいろいろな種目があり、それぞれで異なる楽しみ方があるのをご存知でしょうか。

なかでも “BMXフリースタイル フラットランド”は、平地でさまざまな技を繰り出し観客を魅了するエンターテインメント性の高い種目。今回は、フラットランドのプロBMXライダーであり、BMXを駆使したイベント運営会社の経営者としても活躍する東洋大学法学部企業法学科出身の池田貴広さんにインタビュー。

パフォーマーやモデルなど幅広く活動される池田さんに、東洋大学在学中の思い出やプロのBMXライダーとして活動されるまでのお話、BMXの楽しみ方などを教えていただきました。

【BMXの種類と特徴】BMXフリースタイル フラットランドとは?


――『BMX』とは、どのような競技なのでしょうか?

「まず『BMX』とは、bicycle motocross(バイシクル モトクロス)の略で、BMXという自転車の種類になります。BMXにはいくつか種目があって、土のコースで速さを競う『BMXレース』、ジャンプ台を使って空中で技を繰り出す『BMXフリースタイル パーク』という種目が代表的なもので、僕がやっているのは『BMXフリースタイル フラットランド』という平地でさまざまな技を披露する種目です。」

――「BMXフリースタイル フラットランド」には、どんなところに面白さがあるのでしょうか?

「フラットランドは、独創性が重要視されている競技で、僕はスピン技を中心にパフォーマンスを組みますが、選手によって繰り出される技が異なります。選手それぞれに特徴があるので、観戦するといろいろな選手のスタイルをみることができて、とても面白いと思います。」

――フラットランドはどのように審査されるのでしょうか。

「フラットランドの競技は採点種目なのですが、技の難易度や完成度、オリジナリティ性などを点数化して、順位を競います。技や審査員によって基準があるので、なかなか高得点を出すのは難しい。でも僕はそこに面白さがあると思っていて、自分でつくったオリジナルの技を披露するために、日々新しい技を研究しています。」

【東洋大学×池田貴広】BMXとの出会いと学生時代を振り返る

――池田さんがBMXをはじめたきっかけを教えてください。

「14歳のとき、たまたまストリートで練習していたお兄さんたちが自転車でクルクル回っている姿に衝撃を受けて、好奇心ではじめました。僕の場合、まずBMXのバイクを手に入れるまでも時間がかかったので、最初は家にあったママチャリで練習をしていました(笑)。」

――ママチャリでBMXはできるのでしょうか…?

「BMXを買うまではママチャリでいろいろな技を練習していましたが、やっぱりやりづらいです。専用の自転車ではないので、重いし、大きいし、何より壊れてしまいます(笑)。でも、そのママチャリでやったからこそ注目されるようなこともありましたね。はじめてテレビCMに出たのも、実はママチャリでBMXのスピンをしました。

……でも、やっぱりオススメはしません(笑)。」

――きちんと専用のバイクを用意したほうがよさそうですね(笑)。

「BMXのバイクの値段は、初心者用のモデルでもだいたい5、6万円くらいするので、中学生だった当時は、すぐに買うことができなかったんです。だから持っていたテレビゲームなどを全部手放してお金を貯めて……。手に入れたときは、本当に嬉しかったです。そこからは、どんどんBMXにのめり込んでいきましたね。」

――東洋大学では法律を学んでいたと伺いました。進学を選んだのにはどのような理由があったのでしょうか。

「僕は東洋大学法学部の企業法学科に通っていましたが、高校3年生のときにBMXのプロになったものの、当時はBMXだけで生活をしていくのがまだ難しかったんです。ですから、『まずは大学に進学しながら』と思っていたことと、いずれは『自分で会社を作りたい』という考えがありました。そのためにも法律を学んだうえで会社をつくりたかったので、企業法学科を選びました。」

――東洋大学を選んだのには、何か理由がありますか?

「実は、僕のお父さんもお姉ちゃんも東洋大学なんです(笑)。家族ぐるみで東洋大学生なので、僕自身も東洋大学に興味を持って選びました。」

――そうだったんですね…!プロとしての活動と勉学の両立は大変だったのではないでしょうか。

「授業に出て、練習して、海外遠征にも行って……となると、大変でした。海外に行くと1〜2週間授業に出られないので、友人から授業の様子を聞いて復習したり。授業に出られなかった分を挽回するのは大変でしたが、先生をはじめ多くの方が課外活動にも理解を示してくれていたので、うまく両立できたのかなと思っています。」

――大学で学んだことで、今に生きていることはなんですか?

「企業法学科でいろいろな法律の勉強をしたことですね。今、実際に自分の会社を経営していて、法律の知識が必要になる場面が出てくるんです。そうすると『あ、これ授業でやったやつだ』とふと思い出すこともあって、あのときの勉強が役に立っていると感じます。」

プロBMXライダー池田貴広がこだわる“オリジナル技”開発の極意


動画:BMX PRO RIDER TAKAHIRO IKEDA 池田貴広 / 引用:CYCLENT

――池田さんのオリジナル技「IKE SPIN」とはどんな技ですか?

「『IKE SPIN』は僕がつくったオリジナルの技で、前輪を上げた状態の自転車の上で、自分自身が乗って立ち上がって行います。これをつくったのが2008年、そこから技の成功率をあげていってみんなに見せられるようになったのが、2010年くらいですね。

普通のスピンとの大きな違いは、足を乗せている場所が普通のスピンよりもすごく高い位置にあることです。普通のスピンは後輪のペグに乗って技をします。しかし『IKE SPIN』はシートポスト・サドルの下の棒と、前輪についているペグの上に立ち上がってスピンをします。」


通常のスピン(左)、IKE SPIN(右)/引用:CYCLENT

――『IKE SPIN』はどんなインスピレーションをもとに生まれたのでしょうか。

「『IKE SPIN』は、もともとはフィギュアスケートをみていて思いついた技なんです。フィギュアスケートでは、低い体勢から次第に伸び上がって高くなる動きがあります。BMXではそういった動きがなかったので、それをBMXでも再現したいと思ったのがきっかけでした。」

――思いついてから形にするまでに、期間にしてどれくらいかかりましたか?

「だいたい1年半くらいかかりましたね。でも、はじめて技ができたときは、1000回やって1回という確率です。技を自分のものにするところまでと考えると、全部で3年半くらいかかりました。今でも得意だと思っていた技を本番で失敗してしまうこともあるので、その精度を上げるのはなかなか難しいですね。」

――フィギュアスケート以外にも、どういったところから新しい技のインスピレーションを受けていますか?

「新しい技をつくるときは、基本の技を進化させたり、競技の違うアスリートやパフォーマーの動きや技をみてインスピレーションを湧かせています。僕はとくにBMXのなかでもスピン技が好きなので、ブレイクダンスだったり、フィギュアスケートだったり、そういった種目のスピン技をみて研究したりします。

最近では体操の世界大会がテレビでやっていたのをみて、体操の技術をBMXにも取り入れたいといろいろ考えているところです。でも、いざ挑戦してみると難しかったりして、日々トライアンドエラーを繰り返しながら新しい技をつくっています。」

「BMXをもっと多くの人へ広めたい」。シルク・ドゥ・ソレイユ世界ツアーから学んだ新しいチャレンジとは

――現在、池田さんはプロBMXライダーとして、パフォーマーやモデルと幅広く活躍されていますね。なかでもシルク・ドゥ・ソレイユでの世界ツアー公演は、池田さんのひとつの目標でもあったと伺っています。

「そうですね。2011年、まだ僕が大学生の頃に、世界大会でシルク・ドゥ・ソレイユのスカウトマンに声をかけられたのがはじめてのコンタクトでした。でも、それから4年間音沙汰がなくて、声はかけられたけれどステージには呼ばれない状態がしばらく続いていました。

2013年に大学を卒業し、その後2015年に急に電話がかかって来て、シルク・ドゥ・ソレイユに呼ばれることになったんです。そしてアメリカ公演に半年ほど参加して、その後2017年に新しいショーをつくるタイミングで正規のメンバーになり、2年ほど世界ツアーのショーに出演しました。」

――実際にシルク・ドゥ・ソレイユの世界ツアーに参加して、どのような学びがありましたか?

「パフォーマンスへの姿勢がとても勉強になりました。シルク・ドゥ・ソレイユは、演者も一流、舞台監督も一流、演出家も一流。そんなすごいメンバーが集まって、チームワークで人を楽しませるものを本気でつくっているんです。そのひとりとして関わることができたのは僕にとってすごく学びになり、大いに刺激になっています。」

――シルク・ドゥ・ソレイユでの経験を、今後どのように生かしたいですか?

「2018年の3月に活動拠点を日本に移してからは、現役のアスリートとして世界大会にも出場しています。それももちろん継続していきますが、仲間を集めて、シルク・ドゥ・ソレイユに匹敵するようなパフォーマンスやショーをつくりたいです。そうはいっても、シルク・ドゥ・ソレイユのような一流の人たちが集まってつくりあげてきたものを超えるというのは大変なことだと思います。でも、逆に目標が高いからこそやりがいがあると思っています。」

――現時点で、どんなイメージをしていますか?

「はじめてシルク・ドゥ・ソレイユに出たときはソロでBMXを披露しました。でも次に世界ツアーで出たときは、BMXとバレリーナのデュオだったんですね。そうして違う種目と掛け合わせることで、パフォーマンスに新しい価値が生まれることを実感しました。なので、今後はBMXと別のパフォーマンスを掛け合わせて、もっともっと面白いものをつくれたらな、と思っています。」

――そうした活動を続けるのはなぜですか?

「僕自身、BMXをはじめてから人生が変わりました。それまで僕は、何をやっても中途半端で、何かにのめり込んだこともなかったんです。でも、こうやってひとつのものにのめり込めたことで、人生の道が開けて、本当にBMXに救われたと思っています。実際に乗ってみると本当に楽しいので、このBMXの魅力をいろいろな人に広めていきたいです。」

プロBMXライダー池田貴広に聞く「初心者のためのBMX」


動画:初心者のためのBMX-初心者のための基本トリック5つ

今、注目が高まっている「 BMXフリースタイル フラットランド」。今回は、まず初心者がはじめに習得しておきたい5つの技を動画で解説していただきました。BMXバイクを手に入れたら、5つの基本技からスタートしましょう!

――練習をするときに心がけていることを教えてください。

「僕はBMXを15年やっていますが、やっぱり遊び心を忘れないで楽しむこと。それが続けるうえで一番、大事な秘訣だと思っています。もちろんうまくいかないときもあるし、技が決まらないときもあるし、怪我するときもあります。良いことばかりではないのですが、もともとBMXが楽しくてはじめたので、真剣に向き合いつつ楽しみながら練習するように心がけています。

例えば、同じ技ばかり練習しているとあきてしまうので、『何時から何時まではこの技を練習する!』とある程度時間を区切って練習してみたり、何も考えないでただBMXにまたがって思うままに操ってみるなど競技の練習とは別にBMXを純粋に楽しむ時間を設けることで、うまくバランスをとっています。」

――池田さんが思うBMXの魅力は、どんなところにありますか?

「はじめたときから変わらないのですが、技を通して自分の成長が実感できるところですね。『昨日までできなかった技が今日はできた』とか『今日はできなかったけれど明日はできるかもしれない』とか。そうやって技の成功・失敗を繰り返して自分がどんどん成長していく過程が楽しくて、のめり込んでいきました。でもこれって、BMXをやっていない人もみんな体験していることであって、例えば自転車に乗れなかった人が自転車に乗れるようになったら嬉しいですよね。それを僕は毎日、繰り返しているイメージです。」

――BMXをはじめたい方へ、アドバイスをお願いします。

「BMXをはじめるとなると、バイクを手に入れないとはじまらないというハードルがありますが、とにかく一度、BMXに乗ってみてください。そうしたら絶対にハマるので、ぜひ最初のハードルをクリアして、いろいろな技にチャレンジしてみてほしいですね。」

<プロフィール>

池田 貴広(いけだ たかひろ)
2013年 東洋大学 法学部 企業法学科 卒業

14歳でBMXをはじめ、18歳でプロ入り。自転車を華麗に操るエクストリームスポーツ『BMXフリースタイル』のプロライダーとして活動。ギネス記録保持者であり、さまざまな国際大会で入賞経験を持つ。2年間のシルク・ドゥ・ソレイユ世界ツアー参画後は、東京に拠点を移し、自身の会社を経営しながら世界大会やイベントでのパフォーマンス、モデル、CM出演など幅広く活動している。株式会社サイクレント代表取締役。

池田貴広オフィシャルWebサイト

株式会社サイクレント

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