雷は上から下に落ちない!?雷が起こる原理や身を守るための対策を専門家に聞いた

梅雨が明けると季節は夏。煌々と照る太陽を感じながらレジャーに出かけるのもいいですよね。しかし、夏は天気が不安定になりやすい季節でもあります。皆さんの中には「傘も持たずに出かけたら、突然雷雨に見舞われて立ち往生してしまった……」、そんな経験をした方もいるのではないでしょうか。

この季節、日本各地で連日発生する雷はときに人の命をも脅かします。2017年には東京都世田谷区の花火大会の見物客が集まっていたグラウンドに落雷、9人が病院に搬送される事態も起こりました。もしも外にいる時に雷が発生したら、私たちはどんな行動をとるべきなのでしょうか。から命や財産を守る方法を東洋大学理工学部電気電子情報工学科の教授で、雷にまつわる研究をされている加藤正平先生にお聞きしました。

雷はどうして起こるの?


画像:理工学部電気電子情報工学科・加藤正平教授

― まず、雷が発生するしくみを教えてください。

「雷が発生する理由にはさまざまな説がありますが、一般的には、雲の中にあるちり(微粒子)や水、氷の粒がぶつかり合ことで摩擦帯電が起きたり、氷の粒が分裂したりすることで、大気(雲)の中にプラスとマイナスの電荷が発生することが原因と考えられています。

プラスの電荷は大気(雲)の上の方に、一方でマイナスの電荷は下の方に集まりやすい性質を持っているため、その間には引き合う力が働き、そこに電界が生まれるのです。たとえば、夏の時期によく現れる上昇気流は雷が発生しやすい雲で、その内部は次の図のようになっています。」
■上昇気流(雷雲)の内部

出典:東洋大学高電圧電力研究室

「雲に電界が発生すると、目に見えないような複数の小さな電流が雲から地上へ向かいます。それが地上に到達すると通電し、地面から上空にめがけて電流の柱が登る、これが落雷です。よく雷は、上から下へ落ちると思われがちですが、実は逆なんですよ。」

―雷は地面から雲に伸びていたのですね。ここではわかりやすいように「落ちる」と表現しますが、雷が落ちやすい場所はあるのですか?

雷は、背が高い建物や尖った建物、金属などの放電が行われやすい物質に導かれる傾向があります。背の高い建物に落ちやすいというのは皆さんもご存知だと思いますが、鉄筋構造など金属が多く使用されている建物は、木造に比べると落雷の可能性が高いといえるでしょう。しかしながら、『避雷針』と言われるビルなどの上から突き出た棒状のものが落雷から建物を守る役割を果たしているのです。避雷針は、自ら雷を引き寄せて電流を地面に逃がしているんですよ。」

「車に乗れば大丈夫」、「木で雨宿りしてはいけない」……雷にまつわる噂の真偽とは?

―ここからは雷にまつわる嘘か本当か分からない噂について、先生にお聞きしたいと思います。

その①「雷は人にも落ちる?」

「稀ですが、やはりないとは言い切れません。実際、過去には農作業や音楽イベント中に人に落雷が直撃したケースがありました。これは水田や畑、広場など、周囲に自分の背よりも高いものがない環境が原因で、ゴルフ場などにも同様の危険性があります。現在ゴルフ場には、雷に備えて、警報機や避難小屋が設けられるようになったんですよ。」

その②「車に逃げ込めば安全?」

「これは、本当です。すこし小難しい話になりますが、電磁気学の視点から考えれば、金属で覆われた空間は電圧が0になるため、落雷が直撃したとしても中に乗っている人に電流が流れることはないのです。同じく、電車やバスなどに乗っているときも安全と言えるでしょう。

ただ、車やバスのタイヤ部分は電気を通さない性質であるため、そこから火花が発生する危険性があります。万が一、エンジンからガソリンが漏れていた場合、その火花で引火する可能性はゼロではないので、決して安全というわけではないことを覚えておいてください。」

その③「雷が光ってから音がするまで時間がある場合は、まだ雷が遠いので安心」

「雷の光と音に時間差があったとしても一概に安全とは言い切れません。たしかに、音と光の進む速度(音:約340m/秒、光:30万km/秒)の間には大きな差があるため、光ってから聞こえた音をもとに雷からの距離を測ることは可能です。

しかし、上空数百メートルの雷から見れば、雷が落ちている場所も、今あなたがいる場所も大きな差はないかもしれません。ましてや、雷が落ちやすい条件が揃っていたら……。雷鳴が聞こえたら、安易に自己判断をせず速やかに安全な屋内へ避難しましょう。」

その④「雷が鳴っているときは木で雨宿りしてはいけない?」

「これはとても危険です。雨宿りをしていた樹木に雷が直撃した場合、落ちた雷が樹の幹を離れ、近くにいる人や物を通って、地面に逃げるという現象が起こることがあります。これは『側撃雷』といい、人体が樹木よりも電気を通しやすい性質を持っているために起こる現象です。避難できる建物がない場所で雷鳴が聞こえた場合は、背の高い樹木や金属から離れてなるべく姿勢を低く保つよう心掛けてください。」

雷の被害から、命や財産を守るために


― 雷の被害にはどんなものがあるのですか?

身体に降りかかる被害以外には、大きな電流が流れ込むことによるパソコンやテレビなどの電化製品の故障、火災などが挙げられますね。これらの被害を避けるために、雷鳴が聞こえたら、電子機器のコンセントを抜いたり、可能であればブレーカーを落としてしまうことをおすすめします。また、大きな落雷があると、停電が起きる場合もあります。その際は、電池などで動く予備電源があると便利です。慌てずに復旧を待てるような体制を日ごろから整えておくと安心です。」

― ちなみに、雷で火災が起こるのはどうしてですか?

「雷には、電流が流れ込む場所を探すという性質がありますが、電流の逃げ道がなかった(うまく地面に電流が流れなかった)場合、近くのものに放電して熱や火花を発生させます。この火花の温度は非常に高いため、発火することがあるのです。落雷による火災の発生場所となるのは、電子機器やブレーカー部分が多いですね。」

― なるほど。火災さえなければ屋内にいれば安全なのですか。

「そうですね、基本的には安全といえます。しかし、古い建物の壁や柱には雷の電流が流れる可能性があるので、壁や電子機器からは少し離れた位置にいた方がよいでしょう。」

―屋外にいるときに雷鳴が聞こえた場合、どのように行動するべきですか?

「近くに建物や車がある場合は、そこに一時避難をしましょう。周りに建物がない場合は、雷鳴が大きくなる前に、移動することが望ましいといえます。しかしながら、急激な天候の変化から移動が困難な場合もあります。その場合は、樹木や煙突や電柱など高いものから1メートル以上離れた場所で身を低くし、持ち物は体より高く突き出さないよう抱えてください。雷がおさまり、20分以上が経過してからあらためて安全な場所へ移動しましょう。」

― 突然の雷に備えるためにできることはありますか?

被害に遭わないためには、天気予報と一緒に『雷の予報』も確認しておくことが大切です。とくに登山や、ハイキングなどの行楽に出かける際などは必ず確認するようにしましょう。現在は天気予報が発達し、雷がどのように移動してきているのかがリアルタイムで分かるので、以前に比べ雷の予兆を知ることが簡単になりました。たとえば東京電力が提供している『雨量・雷観測情報』は、登録したエリアに雷雲が発生する予想時刻の1時間前に知らせてくれるので利用してみてください。」

<雷の被害に遭わないためのポイント>
・雷鳴が聞こえたら、近くの建物や車などに避難する
・家電製品のコンセントを抜き、ブレーカーを落とす
・背の高い樹木で雨宿りをしない
・近くに逃げ込める場所がない場合はなるべく低い体勢を保つ
・お出かけの際は、予め天気予報と併せて『雷の予報』をチェックする

 

まとめ

今回は、雷の被害から身を守る方法を教えていただきました。行楽シーズンである夏は、海や山に出かける人も多いはず。そこで急に天候が悪化し、雷がゴロゴロと鳴り始めた……なんてことも十分にありえます。いざそんな状況になってから慌てるのではなく、事前に危険性をチェックし、すぐに避難できるよう心がけておくことが命と財産を守ることにつながるのです。
<プロフィール>

加藤 正平(かとう しょうへい)
東洋大学理工学部電気電子情報工学科 教授
専門分野は電気電子工学、電力工学・電力変換・電気機器。工学博士。『雷サージとその解析技術』など、数多くの論文を発表し、雷に関する市民講座も実施している。電気学会、日本シミュレーション学会所属。

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