“最後のPL戦士”と“150キロトリオ” でプロ野球を席巻する。ドラフト指名された4人が今、思うこと

多くの野球人にとって夢の舞台であるプロ野球。しかし、プロを目指して日々厳しい練習を重ね、試合で結果を残せても、夢を叶えることができるのは、ほんのひと握りの選手しかいません。

その運命が決まる2018年10月25日、プロ野球ドラフト会議。東洋大学硬式野球部からは上茶谷大河・甲斐野央・梅津晃大・中川圭太の4選手が指名され、プロ野球選手として活躍するチャンスをつかみました。

上茶谷選手は、横浜DeNAベイスターズ、
甲斐野選手は、福岡ソフトバンクホークス、
梅津選手は、中日ドラゴンズ、
そして中川選手は、オリックス・バファローズの選手として
活躍の場をプロ野球に移します。

その夢舞台を前に、4人は今、何を思うのでしょうか。苦楽をともにした仲間が集まり、お互いについて、そしてこれからライバルとなる未来について、それぞれ語ってもらいました。(インタビュー:2018年11月29日)

東都1部リーグ優勝19回を誇る名門野球部


▲平成30年度東都大学野球春季リーグ戦で優勝。中川、上茶谷の二人がベストナインに選ばれた

4選手が在籍していた東洋大学硬式野球部は、1922年に創部。90年以上の歴史の中で、多くのプロ野球選手を輩出してきました。

現在、清田育宏外野手(千葉ロッテマリーンズ)や大野奨太捕手(中日ドラゴンズ)、小島脩平内野手(オリックス・バファローズ)、鈴木大地内野手(千葉ロッテマリーンズ)、藤岡貴裕投手(北海道日本ハムファイターズ)、小田裕也外野手(オリックス・バファローズ)、原樹理投手(東京ヤクルトスワローズ)といった選手が第一線で活躍しています。

東洋大学が所属する東都1部リーグは、「戦国東都」「実力の東都」と呼ばれるほどレベルが高く、その中で東洋大学は春秋合わせて19回の優勝を誇ります。他校との勝負だけでなく、チーム内の競争も激しく、その厳しい環境のなかでしのぎをけずりながら4人はプロを目指し、技術を高め合ってきました。

これまで何十人ものプロ野球選手を輩出してきた東洋大学ですが、その歴史をさかのぼっても、一度に4人がドラフト指名されたことは過去にありません。彼らが主力として戦った3年・4年の2年間で東洋大学は3度のリーグ優勝を記録。まさに東洋大学のヒーローです。

インタビューは、野球選手として互いの印象を聞くことから始まりました。

“弱点が見つからない”打者としての中川内野手の凄さ


▲1年生からレギュラーとして活躍した中川選手。PL学園高校時代からその打撃センスは注目されていたが、大学4年間でさらに勝負強さが加わり、大学日本代表にも選ばれた。4年生では主将を務め、リーグ戦3連覇を果たす

―― はじめにお互いの野球選手としてのそれぞれの強みを教えてください。まずはチームの主将でもあった中川選手について、投手3人から見てどのような選手ですか?

甲斐野央(以下、甲斐野) 個人的には相性が悪いので、すごく苦手ですね(笑)。練習でも何本もホームランを打たれていて、おそらくトータルでも8割くらい打たれています。ただ、オリックスに行く中川とは同じパ・リーグなのでライバルです。プロの舞台ではしっかりと勝負していきたいです。

梅津晃大(以下、梅津) 技術も高いけれど、一番の強みは“選球眼の良さ”と“読みの上手さ”だと思います。ストライクからボールになる良いところにフォークが決まってもバットを振らない。普通、バッターには苦手なコースや球種があるのですが、中川はその苦手がわかりにくいですね。

上茶谷大河(以下、上茶谷) たしかに、狙い球を絞ることや配球を読むことにすごく長けています。ピッチャーとしては、“弱点が見つからない”嫌なバッターですね。一度、対戦したときに抑えたところと同じ場所に投げたら、今度は簡単に打たれたりする。そのあたりの経験を踏まえた“読み”が鋭いバッターだと思います。

甲斐野投手の速球と、梅津投手のスケール


▲187cmの長身からバッターに向かっていくダイナミックなフォームが特徴の梅津投手。目標は、大リーグで活躍する大谷翔平選手。子どもに夢を与えられるような、スケールの大きい選手になりたいという

―― 逆に中川選手から見て、各投手にはどんな印象がありますか?

中川圭太(以下、中川) 3人とも持ち味は速球だけれど、甲斐野の球はその中でも速いし重い。角度のあるところからうなるような150km/h後半のスピードボールを投げ込まれるので、少なくとも大学レベルではそう簡単には打てないですね。

梅津はシートバッティングで対戦したときに感じたのが、そのスケールの大きさ。身長があってしかも上から投げおろしてくるので、バッターボックスに立ったときにものすごくマウンドが近くに感じる。打ちづらいピッチャーですね。

甲斐野 梅津は、迫力というか、フォームでプレッシャーをかけられる。それは間違いなく大きな武器だし、真似したくてもできないので、同じピッチャーとしては羨ましいですね。

中川 上茶谷はピッチャーというより、お笑い芸人(笑)。ムードメーカーですね。僕は人見知りだけど、上茶谷は同じ関西人で波長が合うのか、最初から話しやすくて助かりました。

上茶谷 ピッチャーとしての特徴はないんかい!(笑)

負けん気の強さとキレのある球で勝負する上茶谷投手


▲サイドに投げ分けるコントロールと、球のキレで勝負する上茶谷投手。2018年春季リーグ戦では6勝をマークし優勝に貢献。最高殊勲選手および最優秀投手を初受賞、ベストナインにも選ばれる大活躍を見せた

中川 ピッチャーとしての特徴はコントロールとキレ。ボールにかかるスピンの量は、二人よりも多いかもしれない。特に2018年の春はすごかったですね。

甲斐野 球質もいいけれど、個人的には上茶谷の最大の武器は、その負けん気が強いところかなと思います。打たれたりするとマウンド上でも悔しさを露わにするけれど、上茶谷の場合、それがチームに良い影響を与えて、チーム全体が点を取ろうという雰囲気に持っていくことができる。それはどのピッチャーでもできることではないので、上茶谷の強みでもあるかなと思いますね。

―― 上茶谷選手から見て、甲斐野選手の強さは何だと思いますか?

上茶谷 甲斐野はもちろん速い球もすばらしいけれど、僕が凄いと思うのは、本番に強いところ。実は、ブルペンで「凄い!」と思ったことはあまりないんです(笑)。でも、いざマウントに立つと、ものすごい球を投げ込んでいく。その強さを、僕も見習いたいですね。

中川 3人とも150km/h以上の球を投げるという点は凄いし、全員右の本格派だけど、タイプは違う。それぞれにストロングポイントがあるからこそ、球団にも指名していただけたのではないかなと思います。

人間力も鍛える野球。受け継がれる硬式野球部の伝統とは?


▲川越キャンパスにある野球場。ここで4年間汗を流し、プロ野球の舞台を夢見てきた

―― 46年間務めていた髙橋昭雄前監督が退任され、2018年の春から杉本泰彦現監督が就任。おそらく東洋大学硬式野球部としては、大きな転換期になったと思いますが、このお二人の指導法に違いはありましたか?

中川 髙橋前監督は一言でいえば、野球の厳しさを教えてくれた監督です。「お前が打たないと勝てない」「チームを勝たせるバッティングを身につけろ」とよく言われていました。あまり褒められた記憶はありませんが、その指導のおかげで“人間力”も高められた気がします。

上茶谷 僕が髙橋前監督に教えてもらった中でとくに印象に残っているのが、「1球が命取りになる」という言葉。3年生まで失投でホームランを打たれる場面がありましたが、4年生で活躍できるようになったのは、その言葉のおかげだと思っています。練習のときから、1球1球を大切に投げる姿勢を学んだからこそ、試合でも集中力を切らさず、投げることができるようになりました。

甲斐野 僕も褒められたことはほとんどないですね、指導されてばかりで(笑)。でも間違いなく言えることは、髙橋前監督の助言があったからこそ技術的にも人間としても成長できて、その結果、今こうしてプロ野球への道が開けたこと。本当に感謝しています。

梅津 僕の高校時代は、「ピンチで笑え」とか、楽しんで野球をするのがチームのスタイル。たしかに楽しんでプレーできたけれど、結果的に甲子園に行くことができなかった。その悔しさもあって成長するためにあえて、ストイックに野球に打ち込む環境を求めて、東洋大学に進学しました。

結果、すごく良かったと思っています。技術的にも精神的にも鍛えられ、叱られてもそこでしょげるのではなく、プレーで見返そうと思うタフな反骨心も教わったような気がします。

自主性の意識が芽生えた新しい伝統


▲2018年10月25日、プロ野球ドラフト会議。4人は杉本監督(前段左)、チームメイトとともに、各球団からの指名をかたずをのんで待った

―― 4人にとっては学生最後のシーズンが始まる前に監督が代わったわけですが、チームとしての変化はありましたか?

中川 杉本監督になって大きく変わったのは、各選手に自主性がより求められるようになったこと。特に僕は主将として、副主将の梅津をはじめ、メンバーとのコミュニケーション量がものすごく増えましたね。

梅津 そうだね。髙橋前監督は、自らチームを鼓舞して盛り上げたり活気づけたりするリーダーシップを発揮してチームを牽引してくれた印象です。一方、杉本監督は選手が自分たちで考えてチームを作り上げるという指導だったので、中川や学生コーチ、幹部が集まってよく話し合いましたね。その結果、選手全員に考える力が身についた。それと同時に、髙橋前監督がやられていたことを自分たちも経験することで、その偉大さをあらためて実感したように思います。

中川 髙橋前監督が築いてくれた、野球と真摯に向き合う姿勢は東洋の伝統であり、強さ。これは昔も今も、そしてこれからも変わらない。それにこれからは杉本監督による『考える力、自主性』という軸が加わって、東洋の伝統は受け継がれていくのでしょう。

ターニングポイントになった一打・ピッチング


▲最速159km/hの速球が魅力の甲斐野投手。3年の秋季リーグではクローザーながら5勝をマークし、チームの優勝に貢献。大学日本代表に選抜され挑んだ国際大会でも三振の山を築き、その高いポテンシャルを証明した

―― 大学野球で日本代表にも選出された中川選手と甲斐野投手。先発投手としてチームを牽引してきた梅津投手と上茶谷投手。この4年間でターニングポイントになったと思う一打やピッチング、あるいは印象的な試合があったら教えてください。

中川 僕は入学前の3月のオープン戦ですね。その期間は、社会人チームとも試合をするのですが、正直、高校生から大学に入ったばかりで、社会人ピッチャーが投げる球質なんて全然わからない状態でした。でも試合をするうちに「これなら打てるかも」と打席で少しずつ手応えを感じることができて、3試合目で社会人ピッチャーからホームランを打つことができた。そのときに、自分の中で“大学でもやっていける”という感覚を持てたんですね。そこで自信が得られたことで4年間常に上のレベルを目指せたのは、大きかったなと思っています。

甲斐野 僕は、3年生の秋ですね。中川と同じで僕もプロを目指していたけれど、髙橋前監督から「4年生の春に成績を残さないとプロにはいけない」と言われて、「夢を叶えるには、ここで成績を残さなければならない」という必死の想いで秋季リーグ戦に挑みました。

とにかく多く試合に出て、成績を残したいという気持ちで投げていたら、出だしから5連勝。自分にとって大きな自信につながる転機になったように思います。もちろん技術も大事だけれど、「勝ちたい」という強い意志を持つことが、結果を残すには必要だということを学べたリーグ戦でしたね。

梅津 僕が忘れられないのは、2年生のときの甲斐野の1球。当時、僕はベンチに入れず神宮球場のスタンドで応援していました。でも同期の甲斐野はマウンドに立っていた。そして、電光掲示板に表示された球速に驚かされました。背丈が一緒で髙橋前監督からもライバルだと言われていた甲斐野が150km/hを記録したんです。そのときは、素直に凄いと思った一方で、悔しい気持ちと危機感を持ちましたね。

あの1球が、自分もやらなければいけないという気持ちにさせてくれました。3年生になる前の冬に体力強化に励んで、3年生で153kmを出せたのは甲斐野というライバルを凄いと思えた瞬間があったからです。

甲斐野 それはお互い様だね。梅津も上茶谷もいたから、そこで満足して立ち止まることはなかったように思う。近い存在だからこそ負けられないという気持ちに、いつもさせられていたよ。

上茶谷 2年生のときに甲斐野が150km/hを出したときは、僕も刺激を受けました。それから必死に練習して、自信をつかんだのは2018年最初のオープン戦で先発した試合。それまでは中継ぎが多かったけれど、初めてチームにとって大事な試合で先発として使ってもらい、5回を0点に抑えることができたんです。このときの投球が先発の適性を示せる機会になったし、その後のリーグ戦での活躍にもつながっていきました。春季リーグで優勝して、個人タイトルも獲得できたことが、プロ野球へとつながったのはたしか。この最初のオープン戦の投球が、僕の野球人生を変えてくれたと思っています。

東洋大学野球部から新人王(最優秀新人)を


▲ドラフト会議の結果を喜ぶ野球部員

―― 最後に、プロ野球選手になるお互いにエールを送るとしたら、どんなエールを送りますか?

上茶谷 じゃあ、僕から。この4人の中でセ・リーグとパ・リーグの新人王を獲りたい。中川は、すぐに1軍に上がってヒットも打って、シーズン終盤には主軸を打っている姿が想像できるし、同じセ・リーグの梅津とは早く1軍で投げ合いたいね。

梅津 上茶谷だけには絶対に負けないようにするよ(笑)。中川は本当に実践に強いから、早い時期から1軍に上がって活躍してくれると思っている。甲斐野には、球界でもトップレベルでチーム内の競争が激しいと聞くソフトバンクでクローザーの座を勝ち取って、さらに日本を代表するクローザーを目指してほしい。そしてそれぞれ1軍で活躍するようになったら、5年後でも10年後でもいいから、同期で正月か年末にキャンプとかしたいな。自分はそれを目標に頑張るよ。

甲斐野 良いこと言うなあ。梅津が自分と上茶谷の悪ふざけにちゃんと突っ込んでくれたから、この年代はバランスがとれていたような気がするよ(笑)

上茶谷と梅津には同じピッチャーとして負けたくないので、気軽に頑張れとは言えないけれど、やっぱり同世代のライバルとして気になるし、東洋大の同期として応援するよ。中川は、中学・高校・大学とずっとキャプテンをやってきている凄い奴だけど、プロはそんな人たちばかり。でも、その中でもオリックスはもちろん、日本を代表するバッターになってほしい。

中川 じゃあ最後に。甲斐野は日本人最速を出してほしい。梅津は誰よりも勝てるピッチャーになってほしい。上茶谷は、タフなので投球回数や完投回数も十分に稼げるから、沢村賞をとってほしい。そして自分はバッターで、3人はピッチャーで、それぞれ球界を代表するような選手になって、僕らの世代がプロ野球で“東洋世代”と呼ばれることを目指したいね。

梅津・甲斐野・上茶谷 いいね!

―― みなさんのプロ野球での活躍を楽しみにしています。本日はありがとうございました!

◇ ◇ ◇

プロ野球選手という幼い頃からの夢を叶え、その一歩を踏み出した4人が互いに誓うのは、2019シーズン、プロ野球の舞台で新人王を争うこと。そして “東洋世代”と言われる活躍をすること。春季キャンプを経て、数カ月後には、4人にとって新しい球春が到来します。オープン戦、そしてレギュラーシーズンでの4選手の活躍に注目です。

 
<プロフィール>
中川 圭太(なかがわ けいた)
東洋大学法学部第2部法律学科4年
硬式野球部(主将・内野手)
PL学園高等学校出身。右投・右打。1996年4月12日生まれ。大阪府阪南市出身。

プロ野球志望届を提出したが夢は叶わず、東洋大学に進学。広角に打てる勝負強いバッティングで1年生からチームを牽引し、4年時には主将としてチームを優勝に導いた。ドラフト7位でオリックス・バファローズに指名され、念願のプロ野球選手に。
【経歴】尾崎ボーイズ(阪南市立尾崎小学校)―泉佐野シニア(阪南市立尾崎中学校)―PL学園高等学校―東洋大学

 
梅津 晃大(うめつ こうだい)
東洋大学経営学部会計ファイナンス学科4年
硬式野球部(副主将・投手)
仙台育英学園高等学校出身。右投・右打。1996年10月24日生まれ。福島県福島市出身。

身長187cmから最速153km/hの速球を投げおろす右の本格派。高校時代からスケールの大きいピッチャーとして注目を集めたが、プロ野球志望届を提出せず東洋大学に進学。着実に実力を進化させ、ドラフト2位指名で中日ドラゴンズへ。
【経歴】南小泉メッツ(仙台市立南小泉小学校)―仙台育英学園秀光中学校―仙台育英学園高等学校―東洋大学

 
甲斐野 央(かいの ひろし)
東洋大学経営学部会計ファイナンス学科4年
硬式野球部(投手)
東洋大学附属姫路高等学校出身。右投・左打。1996年11月16日生まれ。兵庫県西脇市出身。

最速159km/hのストレートとフォークを武器にクローザーとして活躍。大学野球日本代表にも選抜され、国際大会では13回を投げ、自責点0点、24三振を奪う快投を見せ、注目を集めた。ドラフト1位指名で福岡ソフトバンクホークスへ。
【経歴】黒田庄少年野球団(西脇市立桜丘小学校)―西脇市立黒田庄中学校―東洋大学附属姫路高等学校―東洋大学

 
上茶谷 大河(かみちゃたに たいが)
東洋大学法学部法律学科4年
硬式野球部(投手)
京都学園高等学校出身。右投・右打。1996年8月31日生まれ。京都府京都市出身。

柔らかくしなやかな投球フォームから両サイドに投げ分ける150km/hを超える速球と多彩な変化球を武器に活躍。4年生の春季リーグ戦では先発1番手に抜擢され6勝を記録して最高殊勲選手、最優秀投手、ベストナインに輝いた。ドラフト1位指名で横浜DeNAベイスターズへ。
【経歴】金閣リトルタイガース(京都市立金閣小学校)―京都レッドベアーボーイズ(京都市立衣笠中学校)―京都学園高等学校―東洋大学